高濃度乳腺(デンスブレスト)とは
乳房を構成するのは主に脂肪と乳腺です。乳腺は母乳の産出と分泌を行い、脂肪が乳腺を支えています。乳腺と脂肪、それぞれの量には大きな個人差がありますし、さまざまなファクターによって変化します。たとえば、若い世代の乳房は乳腺が発達していますが、加齢によって乳腺は徐々に退縮していきます。高濃度乳腺は乳腺が発達した状態で、それ自体は異常ではありませんが、乳がんの早期発見に有効なマンモグラフィで異常所見が発見しにくいという問題があります。しかし超音波検査は高濃度乳腺に適した検査ですから、両検査を行うことでより精度を高めた検診が可能になります。
乳腺と脂肪の量による分類
乳房内の乳腺と脂肪の量は、「高濃度」「不均一高濃度」「散在性」「脂肪性」に分類され、高濃度と不均一高濃度がいわゆる「高濃度乳腺」とされます。欧米人に比べて、アジア人は高濃度乳腺の割合が高いとされています。日本で行われた調査では、50歳以下の80%近くが高濃度乳腺という結果になったこともあります。
加齢によって乳腺は徐々に退縮するため、同じ方でも年齢を重ねると脂肪の割合が高くなります。また、子どもが多いなどで授乳期間が長いと、脂肪が多い散在性や脂肪性になりやすいとされています。ただし、閉経後もホルモン補充療法の影響で高濃度というケースがしばしばありますし、個人差も大きいため年齢だけで判断することはできません。
1. 脂肪性(約10%)
ほとんどの乳腺組織が脂肪に置き換わっています。脂肪は透過性の高い黒で表示され、白い異常所見が発見しやすくなっています。高齢の方に多い乳房です。
2. 散在性(約30%)
乳腺は線のような索状だけになっていて、異常所見を比較的発見しやすいとされています。中年以上の方に多い乳房です。
3. 不均一高濃度(約50%)
マンモグラフィの画像全体が白っぽく、異常所見を見つけにくいとされています。日本では、乳がん罹患率の高い40~50代の不均一高濃度が多いため、精度の高い検査と慎重な読影が必要です。
4. 高濃度(約10%)
白い乳腺組織に妨げられ、マンモグラフィで異常所見発見に困難がともなうことがあります。30~40代と若い世代に多いとされています。
乳腺濃度
※スクロールで全体を表示します。
年代 | 割合 | 病変の発見 | |
---|---|---|---|
高濃度 | 30~40代 閉経前 |
約10% | 見つけにくい |
不均一高濃度 | 40~50代閉経前~閉経周辺期 | 約50% | 見つけにくい |
散在性 | 中高齢 多授乳女性 |
約30% | 比較的見つけやすい |
脂肪性 | 高齢女性 多授乳女性 |
約10% | 比較的見つけやすい |
乳がんリスク因子
高濃度乳腺は、乳がんの中程度リスク因子とされています。ただし、高濃度乳腺で乳がんが発生するメカニズムはまだはっきりわかっていません。
高濃度乳腺による見落としの可能性を減らすために
マンモグラフィと超音波検査は発見しやすい病変のタイプが異なるため、検診ではマンモグラフィだけでなく超音波検査も受けるようにすることで、より精度の高い早期発見が可能になります。超音波検査はお体への負担がない検査ですから、妊娠中でも受けられます。また、確定診断のために行う細胞診・組織診でも超音波で病変の位置を確認しながら採取します。
超音波検査とマンモグラフィの違い
マンモグラフィは、超音波検査で発見できない微細な石灰化や引きつれなどの発見に優れています。石灰化はしこりなどができる前の超早期乳がん発見につながる所見ですから、マンモグラフィ検査は重要です。
超音波検査では、マンモグラフィで観察しにくいやわらかい病変を発見しやすくなっています。また、圧迫しないため、しこりの形状や境界の状態なども観察できます。
高濃度乳腺と指摘された方へ
高濃度乳腺自体は異常な状態ではありませんし、乳腺の濃度は年齢や授乳期間、ホルモンバランスなどの影響を受けて変わるものです。高濃度乳腺の場合には、定期的に検診を受けてセルフチェックを習慣付ける重要性は高いと言えますが、過度に恐れる必要はありません。気になること、ご不安がありましたら、気軽にご相談ください。