乳がんの早期発見をセルフチェックで
セルフチェックは、乳房のちょっとした変化や異常をご自分で見つけるために行う自己検診です。乳がんはその60%以上がセルフチェックによって発見されていますし、セルフチェックで見つかることが多い「しこり」は早期の乳がんでも生じることが多くなっています。
重要なのは、セルフチェックを毎月定期的に、正しいやり方で行って、少しでも変化や異常を感じたらできるだけ早く乳腺クリニックを受診することです。セルフチェックで早期発見につながるわずかな変化や異常に気付きやすくするために、有効なタイミング、行う頻度、そして観察に適した姿勢や動作、環境といった効果的なやり方があります。当院では、セルフチェックのやり方や頻度、タイミングなどをわかりやすくお伝えしていますし、ご質問にも丁寧にお答えしていますので、わからないことがありましたら、お気軽にご相談ください。
セルフチェックのポイント
セルフチェックはしこりの有無だけでなく、皮膚や形状の変化、分泌液なども確認します。下記のような変化に気付いたら、早めにご相談ください。また、乳がんの症状はさまざまな現れ方をするため、下記以外の気になること、ご不安があった場合も気軽にご相談いただくことで早期発見につながる可能性があります。
- しこりの有無
- 乳房の形状の変化(左右差など)
- 皮膚の引きつれ
- 皮膚表面に生じたえくぼのようなへこみ
- ただれ
- 出血などの分泌液
など
セルフチェックのやり方
セルフチェックでは、見る・軽く触れる・軽く圧迫するといったことで観察を行います。微細な変化にも気付けるよう、それぞれいくつかの適したやり方があります。特におすすめできるのは、バスタイムやベッドタイムに行うセルフチェックです。
バスタイム
大きな鏡のある洗面所かバスルームで行うセルフチェックです。鏡の前に立って、両手をまっすぐ上に高く伸ばして観察します。正面・側面・斜めの3方向から、乳房や乳頭の変形、左右差、へこみ、引きつれ、ただれなどの有無を確認し、乳頭を軽くつまんで分泌液の有無や性状を確かめます。
バスルームで行うセルフチェックです。ボディーソープを胸、わきの下、手のひらにつけて行うことで、なめらかに指が滑って微細なしこりが確認しやすくなります。右乳房を調べる際には右腕をまっすぐ上に高く伸ばし、左手で右乳房をチェックします。この時、親指以外の4本の指をそろえて乳房表面を軽くなでて滑らせ、しこりやへこみなどの有無を確認します。指の動きは、らせん状の渦巻きのように外側から中心に滑らせるようにしてください。その後、わきの下にそろえた4本の指先をゆっくり入れていき、しこりや腫れの有無を確かめます。
ベッドタイム
仰向けの状態で行うセルフチェックですから、ベッドやお布団の上が適しています。肩甲骨の下に枕やバスタオルなどを置いて仰向けになった時に胸を張るようなポーズになると、乳房が平たく引き伸ばされて小さなしこりなどにも気付きやすくなります。
右乳房を調べる際には右腕をまっすぐ頭上に伸ばし、左手で右乳房をチェックします。左手の親指以外の4本の指をそろえて、指の腹で乳房を軽く圧迫してしこりなどがないか調べます。最初は乳房内側半分を確認し、次に外側半分を確認します。その後、わきの下にそろえた4本の指先をゆっくり入れていき、しこりや腫れの有無を確かめます。
適したタイミング
乳房の状態は月経周期によって変化します。セルフチェックは同じ状態で調べることで小さな変化に気付きやすくなります。セルフチェックの頻度は月に1回程度ですが、単純に「毎月1日」と決めてしまうと月経周期のずれによって乳房が変化している状態でチェックすることになってしまいます。そのため、当院では乳房がやわらかくなってチェックしやすい月経終了後〜1週間というタイミングで行うことをおすすめしています。なお、閉経している場合は、なるべく毎月決まった日に行ってください。
乳がんが発生しやすい場所
乳がんは、乳房の場所によって発生頻度が異なることがわかっています。全国乳がん患者登録調査報告では、乳輪部・外側上部、外側下部、内側上部、内側下部に分けた場合、乳がん発生が最も多い外側上部では47.6%にもなるとしています。そして、内側上部23.5%、外側下部13.0%、内側下部6.8%、乳輪部6.1%と下がります。こうしたことから、特に外側上部は丁寧なチェックを心がけましょう。